業務効率化

AIによる業務効率化の事例と活用効果を解説

業務効率化を目的にAIを導入する企業が増加しています。AI活用を検討しているものの、具体的にAIがどのような業務に活用できるのか把握しきれていない企業担当者もいることでしょう。

当記事ではAIの業務活用例を紹介します。政府機関の導入例や大手企業における生成AIの活用事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

AI導入企業の80%以上が業務効率化や改善に成功している

AI導入企業の80%以上が業務効率化や改善に成功しています。総務省の調査によると、85%以上の企業がAI導入の目的を「効率化・業務改善」としており、85.9%の企業がIoT・AI等のシステム・サービスの導入効果に関して「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と回答しています。

【IoT・AI等のシステム・サービスの導入効果】

画像引用:令和4年通信利用動向調査の結果|総務省

しかしながら、日本企業のAI導入率は諸外国と比較して遅れを取っている状態です。総務省による同調査によるとIoTやAI等のシステム・サービスを導入している企業の割合は13.5%と過去3年間横ばい状態です。

【IoT・AI等のシステム・サービスの導入状況】

画像引用:令和4年通信利用動向調査の結果|総務省

総務省の資料によると企業がAI導入を行わない理由として「導入すべきシステムやサービスが分からない」が46.0%と最多になっています。業務へのAI活用例を把握し、自社に必要なシステムやサービスを明確にすることがAI導入の第一歩となるといえるでしょう。

AIの業務活用例

【AIの業務活用例】

  • 問い合わせ対応
  • コンテンツ作成
  • データ管理・分析
  • 議事録作成

問い合わせ対応

AIチャットボットやAIを活用した音声システムは、問い合わせ対応に活用されています。コールセンターにAIを導入した事例では、AIチャットボットによって24時間対応が可能になり、サービス品質を一定に保てるため、顧客満足度の向上が図れます。

また、社内のヘルプデスクなどにおいてチャット型FAQシステムを導入したり、問い合わせメールへの自動返信を行っている事例もあります。この事例では、よくある質問は、FAQシステムによって自動で回答がされるため、担当者が回答する工数の削減に繋がっています。

AI技術を問い合わせ対応に活用することで人件費を削減できるだけでなく、問い合わせ対応によって従業員が抱えがちなストレスや負担を軽減し、離職率の低下につなげることも可能です。

コンテンツ作成

AIは、WebサイトやSNSなどに投稿する記事や画像などのコンテンツ作成に取り入れられています。

たとえば、生成AIの活用によって、入力したキーワードにもとづいた記事を自動作成するツールがあります。記事を1から作成する手間が省けるため、作業工数や人件費を削減できます。

また、AIアシスタントを搭載したツールでは、文章のトーンやスタイルを指定も可能なため、校正作業の手間も削減できます。さらに競合分析やキーワード分析を行えるツールもあるため、導入するAIツールによっては、SEOを考慮したコンテンツの作成も可能になります。

ほかにも、文章による指示で動画や画像を生成するツールもあり、コンテンツ作成に関わる業務の効率化に役立てられています。

データ管理・分析

AIツールは、顧客や案件データの管理、分析に活用されています。

たとえば、AI技術を活用した営業支援システムでは、AIの強みである「自動学習」を活かしながら、SFAやCRMを活用して蓄積されたデータを分析・予測します。分析されたデータは、AIツールによって可視化され、営業プロセスにおける課題発見に役立ちます。

また、店内の防犯カメラから顧客の行動をデータとして収集し、店内での顧客行動を分析し、店内のマーケティングに活用するAI技術もあります。来店からの導線や購買層の年齢や性別などのデータを分析して店内のレイアウトや仕入れ量を変更して売上増につなげられます。

AIを活用したデータ管理や分析によって、施策の立案や効果測定などが効率化されるため、営業を行ううえでのさまざま課題を解決しながらさらなる成果向上が期待できるでしょう。

議事録作成

AIの音声認識や自動文字起こしの技術によって、議事録作成が効率化されています。

議事録自動作成ツールは、音声認識によって会議中の話者識別を行いながら文字起こしができるツールで、文字起こしにとどまらず会議内容の要約作成等も行えます。さらに、会議中の会話から特定用語の出現頻度を分析したり、感情認識エンジンによって会議の雰囲気を分析できる機種もあり、さまざまな業種の企業や組織で導入されています。

議事録自動作成ツールの中には、リアルタイムでの字幕表示、同時翻訳などが行えるものもあります。同時編集を行える機能を搭載したものや、作成した議事録をクラウド上にアップして共有できる機能を備えたものもあり、議事録作成の省力化だけでなく、編集や共有もより効率的に行うことが可能です。

専門業のAI活用例

【専門業のAI活用例】

  • 製造:生産ラインの検品作業
  • 物流:配送ルートの最適化
  • 人事:人事評価とESシートの評価
  • 医療:画像診断システム
  • 警備:防犯カメラによる行動検知
  • 接客:AI搭載ロボットによる対応
  • 建設:AIによる建設機械の管理

製造:生産ラインの検品作業

AIの画像解析は、製造業などの製造過程における品質管理を効率化しています。

食料品や飲料メーカーの製造ラインにおいては、不良品や異物を学習させたモデルのAIを活用し、画像認識によって製造過程における不良品や異物を排除しています。

また、自動車製造業のなかには、画像認識を活用して部品のひび割れを検知するシステムを導入している企業があります。システムの導入によって従来行っていた内視鏡撮影画像の目視チェックで生じていた光の当たり加減による誤判定を解消し、品質管理の精度が向上しています。

なお、画像解析による異常検知システムは、老朽化した道路やトンネル、橋などの点検にも活用されています。異常検知システムは、目視で確認できないひび割れや漏水なども検知できるため、点検の精度を上げられるだけでなく、労働人口の減少による人手不足の解消を担う技術として期待されています。

物流:配送ルートの最適化

AI技術は、物流の配送ルート最適化に活用されています。配送ルート最適化とは、配送時の「車両」「順路」を計算する技術のことで、配送先が複数存在する場合に配送時間の差を少なくしながら効率的に配送を行い、ドライバーの負担を軽減するために行います。

AIは、事前に条件や現場の制約などを設定すると膨大なデータから「どの車両がどの順路で配送するのが効率的か」をスコア化できます。100箇所以上配送先がある場合にも、5分程度で配送計画を作成可能です。

人事:人事評価とESシートの評価

人事業務においてAIは、従業員のデータに基づく人事評価や人事異動案の作成、エントリーシートの評価などに活用されています。人事評価にAIを導入することによって担当者による主観的な判断ではなく、データに基づく客観的な判断が可能になります。

人事評価では、全従業員の成果やスキルなどのデータを分析を行い、人事担当者の作業をサポートします。また、エントリーシートや履歴書の評価では、初期評価をAIによって行い、不採用と判断されたものを採用担当が確認することで、採用選考にかかる工数を削減しています。

なお、人事や給与関連の問い合わせ対応に自動応答システムを導入している企業もあります。自動応答システムの導入により24時間回答が可能となり、人事部門の従業員の負担軽減やテレワークに対応できる環境の構築が可能になっています。

医療:画像診断システム

医療現場では画像解析の技術を活用し、X線やレントゲン画像を元に病名の提案や異常箇所の検出を行う「画像診断」がいち早く導入されました。さらに、病名や症状のデータを学習したAIは、オンライン診断アプリや臨床診断において、早期発見や診断ミス防止に活用されています。

ほかにも、電子カルテに記載された内容をAIが解析して処方箋の作成する「カルテ解析」や画像認識技術によって血管の位置や太さを識別して採血を行う「自動採血ロボット」、AIが搭載された機械を医師が遠隔操作する「手術支援ロボット」などが実装化されており、医療現場と患者の負担軽減に貢献しています。

警備:防犯カメラによる行動検知

警備業では、画像認識システムと防犯カメラを組み合わせた技術が導入されています。AI技術を活用した警備は、画像認識システムなどのAI機能を搭載した防犯カメラを施設内に設置し、不審な行動を検知した場合、コントロールセンターに通知させる仕組みです。

人員不足などにより警備員を配置して24時間監視を行うのが難しい場合でも、AI技術を活用した警備は時間や体力などの制約なく監視が可能です。さらに、巡回漏れや注意力不足による自人的ミスもなくなるため、セキュリティが向上します。

なお、監視カメラを搭載した自律飛行が可能なドローンの研究開発も進められています。ドローンを活用した警備は、警備員や固定式のカメラでは補いきれなかった死角を削減できるとともに、災害時の被害状況を把握したり大規模イベントにおける人員不足に一躍買う技術といえるでしょう。

接客:AI搭載ロボットによる対応

接客業では、AIを搭載した接客ロボットを店舗に導入し、従業員の負担軽減や人材不足の解消に役立っている事例があります。接客ロボットは、AIセンサーによって人や障害物を検知できる機能が搭載されており、店内を徐行しながら料理や飲み物を注文したお客のテーブルまで運ぶことが可能です。

また、企業や各種施設の受付対応にAI接客システムを導入している事例もあります。AI接客システムにはさまざまなタイプがありますが、搭載したAIによる自然言語処理で会話の流れを読み取ることができるため、顧客の質問や接客対応がより自然に行えるのが特徴です。

接客業務にAI技術を活用したロボットやシステムを導入することで、人材不足の解消や人件費の削減を行えるだけでなく、従業員によってばらつきが生じる対応品質を均一化する効果も期待できます。

建設:AIによる建設機械の管理

建築業ではAIの活用によって作業現場での安全性を向上させるとともに、深刻化している労働力不足に対応しています。

AIセンサーを搭載した建設機械は、機械の稼働状況や性能をリアルタイムで監視できます。建設機械の監視データから異常な挙動やパターンを検出することで、将来の故障を予測し、修理コスト削減や事故のリスク軽減に役立てることが可能です。

また、AIカメラによって障害物検知を行う自動運転可能な建設機械が搭載された実装化されており、指定された場所への土砂の運搬や排土を無人で行うことができます。建設業ではAIの活用によって建設現場における管理手法のリモート化が推進されています。

AIを活用した業務効率化のポイント

【AIを活用した業務効率化のポイント】

  • AIの導入目的を明確にする
  • AIの活用に必要なデータを用意する

AIツールの導入目的を明確にする

AIを導入する目的が明確でない場合、AIツールが活用されなくなってしまう可能性があります。AIツールの導入が目的になってしまい、AIツールの役割が実際の業務プロセスにおける課題と乖離してしまうためです。

また、AIツールの導入が目的になってしまった結果、自社の課題解決に適さないツールを導入してしまう可能性もあります。

そのため、AIを導入する際は、業務において時間の掛かっていることや繰り返し行っている作業など、実際に業務を担当している従業員からヒアリングを行うことが重要です。

AIツールの導入は、業務プロセスの変更や、働き方の改革にも繋がる可能性があるため、事前の打ち合わせや分析を行い、導入目的を明確にしてAIツールを導入するようにしましょう。

AIの活用に必要なデータを用意する

AIツールの導入よって業務を効率化するためには、データの準備が必要になります。導入するAIツールによりますが、企業がもつデータを分析して提案や予測を行うためです。

導入前に、自社の活用する既存のシステムに顧客情報や販売履歴などのデータが蓄積されているかを確認します。これらのデータは、AIが学習する基盤となり、ビジネス上の課題を解決するために活用されます。

さらに、データの質と整理も、AIツールのパフォーマンスに影響を与えます。不完全なデータや正確性にかけるデータが多い場合、分析や予測の誤りを招く可能性があるため、適切なデータ管理やデータクレンジングを行いましょう。

AIによる業務効率化の注意点

AIを活用した業務効率化を推進する際は、注意点があります。

【AI活用の注意点】

  • 継続的な効果検証が必要
  • AI活用を推進できるデジタル人材が不足している

継続的な効果検証が必要

AIツールの導入後は、効果を継続的に検証し、業務効率化に繋がっているかを確認する必要があります。

AIツールの効果検証は、作業時間や顧客満足度などの具体的な指標を用いて行います。AIツールの導入前と導入後の指標を比較して導入効果を計測しましょう。

また、AIツールが効果的に活用されているかどうかも確認が必要です。従業員がAIツールを適切に使いこなせていない場合、適切な効果検証ができないため、教育体制の見直しやマニュアルの作成など行いAIツールの活用を推進しましょう

効果検証は、AIツールが業務に適切に組み込まれ、期待した成果をもたらしているかどうかを確認するための重要な手段です。定期的な効果検証によって、AIツール活用における課題点を把握し、運用改善を行うようにしましょう。

デジタル人材が不足している

AIを効果的に活用するためには、データ管理やAIツールの運用に必要なスキルや知識を持つデジタル人材が必要です。しかし、十分な知識やスキルを持ったIT人材は不足しており、多くの企業が人材不足となっています。

総務省の情報通信白書によると、日本企業の約70%が人材不足を経験しており、デジタル技術の知識やリテラシーの不足も約45%の企業で問題となっています。

AIツールを導入する際は、AIを活用した業務効率化を推進できるデジタル人材が自社にいるか確認しておきましょう。自社にデジタル人材がいない場合は、デジタル人材を採用するか、オンボーディングサポートが充実しているAIツールの導入を検討してみてください。

参考:情報通信白書 令和4年版「第2部第8節 デジタル活用の動向」

政府機関のAI導入による業務効率化事例

金融省の金融サービス利用者相談室では、AIを活用した自動応答サービスを導入した事例があります。この事例では、オペレーターによる電話対応時間外の問い合わせ対応をAIツールによって行うことで利用者の利便性を高めています。

また、AIチャットボットで利用者が質問を選択したり、複数のキーワードや質問文を所定の箇所に入力するとWebサイト上の関連ページを案内できるようにしています。自動応答サービスは、よくある質問や時間帯別の利用状況を分析してレポートとして出力できたり、庁内管理者がFAQの追加などの運用ができるような仕様になっています。

さらに、人事院では対面会議やWeb会議の議事録作成にAI文字起こしアプリを活用しています。文字起こしアプリはインストールしたパソコン内で動作および処理が完結する「スタンドアローン形式」のものが選定されており、アプリを頻繁に利用する部署は、使用頻度の高い用語を別途辞書登録しています。

文字起こしアプリの導入効果として人事院では使用状況を把握しており、導入直後の2か月間における使用率は約50%と、ほぼ毎日利用されており、AI技術が議事録作成の効率化に寄与していることが伺えます。

参考:政府機関におけるAI導入促進に向けた調査 (報告) |内閣府

大手企業では生成AIの活用が進んでいる

【大手企業での生成AI活用例】
企業名 導入サービス 業務効率化の例
NTTドコモグループ LLM付加価値基盤
  • 社内業務効率化
  • お客様対応業務のDX化
  • ユースケース創出
ソフトバンク株式会社 ソフトバンク版AIチャット
  • 既存業務(文章作成、翻訳など)の効率化や生産性の向上
  • 営業
  • サービス開発における各種プログラミングサポート
  • コールセンター業務
株式会社日立製作所 Generative AIセンター
  • 文章作成、要約
  • 翻訳
  • ソースコード作成

NTTドコモグループ

NTTドコモグループでは、2023年に生成AIの社内活用に向けた「LLM付加価値基盤」の実証実験を行い、サービスとして提供しています。

LLM付加価値基盤は、Azure OpenAI Serviceと連携して利用可能な基盤として、AI活用時の情報漏洩や正確性の担保などの課題に着目し開発されています。LLM付加価値基盤は、社内業務の効率化だけでなく、ドコモが保有するビッグデータや音声認識や画像認識などのAI技術と組み合わせることで、法人向けの新たな付加価値サービスとなることを目指しています。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社では全従業員を対象に2023年から「ソフトバンク版AIチャット」のサービス利用を開始しました。「ソフトバンク版AIチャット」は、従業員が生成系AIをより積極的かつ安全・安心に利活用することを目的にしており、既存業務の効率化をはじめ、あらゆる業務への応用を目指しています。

株式会社日立製作所

日立製作所では2023年に生成AIの社内外での安全・有効な利活用を推進する「Generative AIセンター」を新設しました。

Generative AIセンターは、生成AIの知見を有する人材と社内IT、セキュリティ、法務、品質保証、知的財産など各業務のスペシャリストが集結し、リスクマネジメントを行いながら活用を推進する組織として機能しています。

同センターでは、生成AIを日立グループのさまざまな業務において利用推進しながら、生産性向上に繋げるノウハウを蓄積しています。蓄積したノウハウは、生成AIの利用を検討している顧客を支援するコンサルティングサービスに活用されています。

まとめ

日本企業のAI導入率は横ばい状態が続いているものの、AI導入企業の80%以上が業務効率化や改善に成功しています。

AIは業種を問わず、多岐にわたる業務に活用されており、業務効率化だけでなく、人件費削減やサービス品質の向上に活用されています。さらに、一般企業だけでなく、政府機関においてもAI導入によって業務効率化を行っている事例があります。

AI導入を検討している企業は、業務へのAI活用例を把握し、自社に必要なシステムやサービスを明確にすることがAI導入の第一歩となるといえるでしょう。

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