基礎知識
取締役会議事録とは?作成方法や記載事項の書き方を解説
企業の意思決定を記録し、その信頼性と透明性を確保することは、ガバナンスを支える重要な要素です。取締役会議事録は、法的義務を果たすだけでなく、将来的な紛争の予防や企業の健全な運営に寄与します。本記事では、取締役会議事録が果たす重要な役割やその意義に加え、法律で求められる要件や実際の作成手順、効率的に議事録を作成するためのツールや実務上のポイント等について詳しく解説します。
取締役会議事録とは
取締役会議事録は、企業の意思決定過程を文書化し、適切なガバナンスを支える重要な記録です。その存在は、法例遵守や透明性の確保を目的とし、組織運営の土台となります。ここでは、以下のポイントについて詳しく解説します。
- 取締役会議事録の定義
- 法的に求められる役割と目的
取締役会議事録の定義
取締役会議事録とは、会社法に基づき、取締役会での議事内容や決議結果を正確に記録するための文書です。これは、取締役会が適切に開催され、法律を遵守していることを示す証拠としての役割を果たします。また、議事録には開催日時や出席者、議題、決議事項などが詳細に記載される必要があり、形式や内容についても法律で定められています。
取締役会議事録の作成は、単なる記録ではなく、後に紛争やトラブルが生じた際に客観的な証拠として機能します。そのため、内容の正確性と完全性が求められ、記載事項の漏れや不備は法的な問題を引き起こす可能性があります。
法的に求められる役割と目的
取締役会議事録は、法律によってその作成が義務付けられており、企業の透明性と合法性を担保する重要な文書です。その目的は、企業運営の信頼性を高めると同時に、将来的なリスクを未然に防ぐことにあります。
これらの役割を果たすことで、取締役会議事録は企業活動における重要な意思決定を裏付け、外部からの信頼を向上させます。特に、法律を遵守したガバナンスの証明や、紛争が発生した際の公正な証拠資料として機能することが挙げられます。議事録が適切に作成されることで、社内外の利害関係者との摩擦を防ぎ、企業の安定運営を支える重要な基盤となります。
取締役会議事録が必要な理由
取締役会議事録は、企業運営の透明性と適法性を担保するために欠かせない重要な文書です。適切に記録を残すことで、法律への対応や組織内外の信頼性向上につながります。ここでは、以下の観点から取締役会議事録が求められる理由を解説します。
- 作成しなかった場合の法的リスク
- 紛争予防や事業承継の円滑化
- 株主への情報開示と信頼性向上
作成しなかった場合の法的リスク
取締役会議事録を作成しない場合、会社法に基づき法的リスクが発生します。具体的には、会社法第976条において、議事録を適切に保存しなかった場合に最大100万円の過料が科される可能性があります。また、議事録が作成されていないことで、取締役会の決議内容が曖昧となり、企業の意思決定の正当性を証明できなくなる場合があります。
さらに、取締役会での決議が株主や第三者との法的トラブルに発展した際、議事録の有無が訴訟の行方に大きな影響を及ぼします。このように、議事録の未作成は会社の信頼性を損なうだけでなく、経営陣個人にも責任が及ぶ可能性があるため、確実な作成が求められます。
紛争予防や事業承継の円滑化
取締役会議事録は、議論や決定の経緯を客観的に記録することで、将来の紛争を未然に防ぐ役割を果たします。たとえば、取締役間で意見の相違が発生した場合でも、議事録があれば合意に至った内容を明確に示せるため、誤解やトラブルを最小限に抑えられます。
また、事業承継の場面においても、過去の経営方針や重要な決議内容が記録されていることは、スムーズな引き継ぎを実現するための重要な要素です。特に、家族経営や中小企業においては、議事録が信頼性の高い資料として活用されることが多く、後継者の負担軽減にも寄与します。
株主への情報開示と信頼性向上
取締役会議事録は、株主に対する情報開示を適切に行い、企業の透明性を向上させるために重要な役割を果たします。株主は会社の所有者であり、取締役会での意思決定がどのように行われたかを知る権利があります。議事録を作成することで、株主に対し経営の公正性と正当性を説明でき、信頼関係の構築につながります。
さらに、議事録は株主総会の開催時や監査対応時においても活用され、企業の信頼性を強化する証拠資料となります。特に上場企業では、株主や投資家に対する情報開示が重視されるため、議事録の内容が適切であることは経営の安定にも直結します。
取締役会議事録の作成者と期限
取締役会議事録の作成には明確な責任者が存在し、期限や保管方法についても法的に規定されています。欠席者についても、議事録への署名または捺印を求められる場合があり、全員が議事録の正当性を確認することが求められます。ここでは、以下の点について詳しく解説します。
- 議事録を作成する責任者は誰か
- 作成期限と提出期限
- 保管期限と書面決議
議事録を作成する責任者は誰か
取締役会議事録を作成する責任者は、一般的には議長を務める取締役とされています。ただし、実際の作業は取締役会の出席者や事務局スタッフがサポートすることが多いです。議長には、議事録の内容が正確であることを確認し、署名または記名押印を行う責任があります。
また、会社法では取締役全員が議事録の正確性を確認する義務を負っています。そのため、欠席した取締役も、後日議事録の確認を行い、内容に問題がないことを証明する場合があります。
作成期限と提出期限
取締役会議事録の作成には、明確な期限が設けられています。会社法第369条に基づき、議事録は取締役会終了後速やかに作成する必要があります。「速やかに」とは、具体的な日数が規定されていないものの、一般的には数日から1週間以内に作成されることが求められます。
また、提出期限に関しては、通常は会社内部で保管するため外部への提出は必要ありませんが、監査役や株主からの請求があった場合には速やかに開示できる状態にしておく必要があります。
保管期限と書面決議
取締役会議事録の保管期限については、会社法第371条により、10年間の保存が義務付けられています。取締役会の代替手段として認められる書面決議の場合でも、決議内容を記録した文書を保存する義務があります。これも議事録と同様に10年間保管し、内容が明確に記載されていることが求められます。書面決議を行う際は、取締役全員が内容に同意していることが条件となるため、記録の正確性がより一層重要です。
取締役会議事録に記載する内容
取締役会議事録に記載すべき内容は、会社法施行規則第101条第3項に詳細に定められています。この規定は、企業運営の透明性を保つための重要な指針となっており、記録の正確性と完全性が求められます。適切な記載が行われていない場合、法的な問題が生じる可能性もあるため、以下のポイントを確実に押さえる必要があります。
- 必要な記載事項
- 決定事項の要点を簡潔にまとめる
- 出席者の氏名と押印が必要
必要な記載事項
取締役会議事録には、開催日時や場所が正確に記載されなければなりません。これは、会議が適切な形式で実施されたことを証明するために必要不可欠です。具体的には、以下のような内容を記載します。
- 開催日時:例)「2025年1月15日 午前10時から12時まで」
- 開催場所:例)「本社第2会議室(東京都港区○○1-2-3)」
これらの情報は、議事録が後に外部関係者や監査役に閲覧された際、会議が正当に行われたことを示す重要な証拠となります。また、記載漏れがあると法的リスクが生じるため、注意が必要です。
決定事項の要点を簡潔にまとめる
取締役会では、企業の重要な意思決定が行われます。そのため、議事録には決定事項の要点を簡潔かつ正確に記録することが求められます。以下は記載例です。
- 議題:「2025年度事業計画案の承認について」
- 決定事項:「全会一致により承認された」
議事録には、議論の全体を記録する必要はありませんが、決定事項の根拠となる主要な意見や議論の概要を簡潔にまとめることで、後日の確認やトラブル防止に役立ちます。また、曖昧な表現は避け、具体的な内容を記載することが重要です。
出席者の氏名と押印が必要
取締役会議事録には、出席した取締役や監査役の氏名を明記することが必須です。また、押印については法的に義務付けられているわけではありませんが、議事録の正当性を高めるために多くの企業で慣例的に行われています。こうした対応により、議事録の信頼性が向上し、監査や紛争時にも有効に機能します。会議が適法に開催されたことを証明し、議事録の正当性を担保するための重要な要素となります。
- 出席者の記載例:「取締役:○○ △△、□□ ××、監査役:△△ ○○」
- 押印の必要性:多くの場合、出席者全員の署名または押印が求められる
また、欠席者についても記録する場合があります。特に、会議後に議事録を確認し、同意の上で署名や押印を求められるケースもあるため、これらの手続きが迅速かつ確実に行われるよう配慮が必要です。議事録が正しく保管されていることが、企業運営の信頼性を向上させます。
取締役会議事録の文書・文例
取締役会議事録を作成する際には、会議の内容や決議事項を的確に記録できるフォーマットや雛形があると、作業がスムーズに進みます。ここでは、以下の3つのケースでの取締役会議事録の文書・文例をお伝えします。
- 代表取締役の選定の場合
- 譲渡制限株式の譲渡の承認の場合
- 重要な財産の処分の場合
代表取締役の選定の場合
第●回 取締役会議事録
開催日時 ●年●月●日 ●時●分~●時●分 開催場所 本社 大会議室 出席者 取締役総数 ●名(うち出席取締役 ●名) 監査役総数 ●名(うち出席監査役 ●名) 出席が確認された後、議長に選ばれた取締役●●が定刻通りに会議を開始し、議事に入った。 (決議事項) 第1号議案 代表取締役選定の件 議長から、当日開催の株主総会において全取締役が選任され、全員が就任を承諾した旨の報告が行われた。これを踏まえ、定款●条に基づき新たな代表取締役を選定する提案がなされた。出席者による審議の結果、取締役●●が全員一致で代表取締役に選定され、本人が就任を承諾した。 第2号議案 ・・・(省略) すべての議案が終了したため、議長は●時●分に会議を閉会したことを宣言した。 本議事録は、会議の経過および決定事項を明確に記録するために作成され、出席取締役および監査役が以下に記名押印する。 ●年●月●日 株式会社●● 取締役会 議長 取締役 ●● ㊞ 取締役 ●● ㊞ 取締役 ●● ㊞ 監査役 ●● ㊞ |
譲渡制限株式の譲渡の承認の場合
第●回 取締役会議事録
開催日時 ●年●月●日 ●時●分~●時●分 開催場所 本社 大会議室 出席者 取締役総数 ●名(うち出席取締役 ●名) 監査役総数 ●名(うち出席監査役 ●名) 取締役●●は●支店会議室からテレビ会議によって出席 定刻となり、代表取締役●●が議長に選出され、定款に基づき本取締役会がWEB会議システムを用いて開催される旨を宣言しました。システムの適切な機能により、出席者間での即時かつ的確な意思疎通が可能であることが確認され、審議が開始されました。 (決議事項) 第1号議案 株式の譲渡承認請求の件 議長より、当社株主から以下の内容で譲渡制限株式の承認請求がなされた旨の説明があり、審議が行われました。全出席者による慎重な討議の結果、全員一致で承認されました。 譲渡人(承認請求株主) 東京都●区●丁目●番●号 ●● ●● 譲渡の相手方 東京都●区●丁目●番●号 ●● ●● 譲渡制限株式の数 普通株式●●株 第2号議案 ・・・(省略) (報告事項) 報告事項に関しては議長から説明が行われ、各出席者からの質問・意見が適切に処理されました。 議事のすべてが終了したため、議長は●時●分に閉会を宣言しました。本取締役会議事録は、議事内容とその結果を明確に記録するため作成され、出席者全員が署名または記名押印することが確認されました。 ●年●月●日 株式会社●● 取締役会 議長 取締役 ●● ㊞ 取締役 ●● ㊞ 取締役 ●● ㊞ 監査役 ●● ㊞ |
重要な財産の処分の場合
第●回 取締役会議事録
取締役会の決議が成立した日 ●年●月●日 提案者 代表取締役 ●● (決議内容) 第●号議案 ●●売却に関する件 当社は、株式会社●との間で別紙●●売買契約書に基づき契約を締結することを承認した。 ●年●月●日、代表取締役●●が取締役及び監査役に対し本件について提案を行った。議案については、議決権を有する取締役全員より書面にて同意が得られ、監査役からも異議の表明がなかったことが確認された。これにより、会社法第370条および当社定款第●条に基づき、取締役会の決議が成立したとみなされた。 本件について、会社法第370条および会社法施行規則第101条第4項第1号に基づき、取締役会の決議内容を明確に記録するため本議事録を作成した。 ●年●月●日 株式会社●● 取締役会 議事録作成者 代表取締役 ●● ㊞ |
取締役会議事録にはAI議事録ツールがおすすめ
取締役会議事録は、企業の意思決定を正確に記録し、透明性を確保するための重要な文書です。しかし、会議の内容を手作業で記録することには多大な労力がかかり、ミスや記録漏れが発生するリスクもあります。こうした課題を解決する手段として、AI議事録ツールの導入が効果的です。
AI議事録ツールを活用することで、議事録作成が効率化され、「言った、言ってない」といった不毛なやりとりを回避できます。特に、正確な文字起こしや話者分離の機能が搭載されたツールは、会議の内容を客観的に記録し、後々のトラブルを未然に防ぐ助けとなります。
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まとめ:AI議事録ツールならJAPAN AI SPEECH
取締役会議事録の作成は、企業運営における重要な業務の一つです。しかし、記録の正確性や効率性を手作業で確保することは容易ではありません。こうした課題に対し、AI議事録ツールは優れた解決策を提供し、会議運営の透明性を高めることができます。
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